フローティングスタティックの設定と確認方法

フローティングスタティックってどんな技術?

ルータは特定のルート情報を複数の情報源(スタティックやルーティングプロトコル)から受け取っているとき、AD値(アドミニストレーティブディスタンス値)が一番小さいプロトコルのルートをルーティングテーブルに載せます。

障害などでAD値が一番小さいルートを利用できなくなった場合、ルータは次にAD値が小さいプロトコルのルートを利用します。今まで利用していたルートが使えなくなり、スタティックルートが浮上(floating)することをフローティングスタティックと呼びます。

サンプル構成を見てみましょう。現在、ルータは100.0.0.0/24へのルートを2つ持っています。(R1経由のルートとR2経由のルート)

R1からはOSPF(AD値100)で学習し、R2へはスタティック(AD値200)で設定しています。

通常時の通信経路は、R1からOSPFで広報された100.0.0.0/24の経路を利用し、
R1経由で目的地に到達しています。これはOSPFの方がAD値が小さいからです。
(スタティックの方はAD値が200で設定されています。)

図1:通常時の通信経路

ここでR1に障害が発生すると、ルータはOSPFで100.0.0.0/24のルートを学習出来なくなります。
すると、R2宛てに設定していたスタティックルートが浮上してきて、R2経由で到達できるようになります。

図2:障害時の通信経路

フローティングスタティックってどうやって設定するの?

フローティングスタティック用のスタティックルートの設定は、非常にシンプルです。
通常のスタティクルートに、AD値のオプションを付けるだけです。

次の例では、宛先ネットワーク100.0.0.0/24、ネクストホップ2.2.2.3 のスタティックルート設定に
AD値200のオプションを付けています。

Router(config)#ip route 100.0.0.0 255.255.255.0 2.2.2.3 200

フローティングスタティックの設定確認方法は?

フローティングスタティックの設定は、show ip static routeコマンドで確認することができます。
スタティックルートのみを表示させるshow ip route staticコマンドと似てるので、紛らわしいですね。

show ip static routeコマンドの出力を見てみましょう。
プリフィクスの前の「M」は手動でスタティックルートを設定していることを示しています。
AD値は200で、末尾の「A」はネクストホップの2.2.2.3が到達可能であることを示します。
ネクストホップがダウンしていると「N」表記になります。

Router#show ip static route
Codes: M – Manual static, A – AAA download, N – IP NAT, D – DHCP,
G – GPRS, V – Crypto VPN, C – CASA, P – Channel interface processor,
B – BootP, S – Service selection gateway
DN – Default Network, T – Tracking object
L – TL1, E – OER, I – iEdge
D1 – Dot1x Vlan Network, K – MWAM Route
PP – PPP default route, MR – MRIPv6, SS – SSLVPN
H – IPe Host, ID – IPe Domain Broadcast
U – User GPRS, TE – MPLS Traffic-eng, LI – LIIN
IR – ICMP Redirect
Codes in []: A – active, N – non-active, B – BFD-tracked, D – Not Tracked, P – permanent

Static local RIB for default

M 100.0.0.0/24 [200/0] via 2.2.2.3 [A]

Router#

また、debug ip routingコマンドを利用することで詳細な動作を確認できます。
下記サンプル出力では、OSPFのルートをルーティングテーブルから削除して、
スタティックルートが浮き上がってきている様子が分かります。

Router#debug ip routing static detail
IP static routing detail debugging is on
Router#
*Jan 1 23:43:28.683: RT: del 100.0.0.100 via 1.1.1.2, ospf metric [110/3]
*Jan 1 23:43:28.687: RT: delete subnet route to 100.0.0.100/32
*Jan 1 23:43:28.707: IP-ST(default): callbackup route, 100.0.0.100/32
*Jan 1 23:43:28.707: IP-ST(default): updating same distance on 100.0.0.100/32
*Jan 1 23:43:28.707: IP-ST(default): 100.0.0.100/32 [200], 2.2.2.3 Path = 2 3 7
*Jan 1 23:43:28.707: RT:updating static 100.0.0.100/32 (0x0):via 2.2.2.3
*Jan 1 23:43:28.711: RT: add 100.0.0.100/32 via 2.2.2.3, static metric [200/0], add succeed, active state

 

 

 

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